月刊敬和新聞

2018年4月号より「祈りによって立つ」

校長 中塚 詠子

祈ったことがありますか?
 「苦しい時の神頼み」をしたことがありますか?どんな神様でもよいのですが、祈ったことがない人はいないと思います。私たち人間は信仰を持っていると自覚していない人でも人間の力を遙かに超えた何か大きな存在があるということを知っているようです。そして困難にあうと誰にも教えてもらわないのに祈るようです。
 敬和では入学説明会でもオリエンテーションキャンプでも聖書の授業でも祈ることは「神様と向き合うこと」「自分と向き合うこと」と説明しています。ですから祈るときにはひとりになります。たとえば満員バスや電車の中で祈ってもその人はその時ひとりぼっちになるのです。

祈りを科学が分析する
 最近の脳科学では祈ることで脳が変化し、祈る人は幸せになるのだという研究が進んでいるそうです。ペンシルバニア大学の研究グループによると、祈りを極めた人の祈りはそうでない人と働きが少し違うことが分かってきたのだそうです。それは「自分」と「他人」を区別する働きが抑えられるというのです。つまりそれは「自分が孤立した存在ではなく自分以外のものと分かちがたく結ばれているような感覚」であったり「時間を超えて無限にひろがっていく感じ」なのだそうです。この感覚は自分が「幸せだ」と単純に感じるときの感覚を遙かに超えた幸福感だそうです。
 どうやら真剣に祈ることは幸せにつながるようです。

脳を育てる
 幸せになりたいのであれば脳を育てて祈るということが近道のようです。では脳を育てるにはどうしたらいいのでしょう?脳を育てる代表的な刺激として「対話」があります。それも毎日同じような顔ぶれに会うより、新しい知人・友人に会う方が脳にとって良い刺激となり、神経ネットワークが育っていくのだそうです。さらに同質の人より違った考え方や価値観を持った人と交流する方が脳への良い刺激となるようです。
 現代人はSNSでたくさんの人と対話していますが、実際に会って話す方が脳への刺激は圧倒的に大きいようです。人は他者とのつきあいにおいて文字や言葉だけでなくトーンや口調・速さ・表情など「非言語コミュニケーション」からたくさんの情報を得ているからです。話し手が聞き手に与える言語情報は実に全体の7%です。残り93%は非言語コミュニケーションですから、SNSなどのコミュニケーションは脳への刺激が乏しいことが分かります。
 脳細胞がプラスの変化をとげて祈りが叶うためにはどれくらいの期間が必要なのでしょうか?人間の細胞は入れ替わるまでに約3か月かかります。そこから類推すると一つのことを日々祈り続けるにしても最低3か月くらい継続してみるという決意が必要かもしれません。今から祈ると3か月後は前期末になりますね。毎日淡々と祈り続けてほしいと思います。
 一方で脳は大変怠け者です。もっと簡単に言うとすぐに慣れてしまうのです。ですから祈りも無意識に惰性で流してしまいがちになるのです。祈るときには意識を持って祈ること、つまり心を込めて祈ることが大切です。

祈りによって建てられた学校
 新学年・新学期は新しい出会いがたくさんあります。新入生の皆さんはもちろんクラス替えのあった2年生も新しい「対話」のチャンスです。
 3年生は後輩との出会いはもちろんですがフェスティバルや部活動で違った価値観に触れる機会が多くあることでしょう。新しい教科を通して刺激を受けることも考えられます。
 敬和学園は「新潟にキリスト教学校を!」と願った方たちの多くの熱い祈りが最初のきっかけとなり歴史の要請と相まって建てられ、今年五一年目の歩みを進めます。真剣な祈りが継続されて学校設立への具体的な動きとなりました。それ以来、敬和学園は多くの方々に祈られ支えられているのです。今日もまた敬和生は祈られているのです。一人になって自分を見つめる「祈り」は大切な時間です。祈りによって他者に気づき、他者と繋がり、共に高め合っていけるのです。祈られていることに感謝しつつ、祈る人へと成長してほしいのです。祈りによって建てられた学校で祈りによって立つ人へと成長するのです。