自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2017/11/24
ソフト中華麺(味噌野菜スープ)・もち米シューマイ・ぜんまいナムル・牛乳・バナナ
俺は教員になる前、洋酒メーカーの新潟支店に勤めていた。
通っていた教会の「高校生会」担当をしていて、そこに敬和生がたくさん来ていた。
十六、十七、十八回生たちだった。
俺はそいつらを家に呼んで餃子を食わせたり、クリスマスの演劇をさせたりして可愛がった。
寮に開かずの部屋があり、そこにずっと眠り続けている先輩が住んでいる。
その先輩がクリスマスの日に目を覚まし、腹を空かした寮生を飯屋に連れて行ってやる。
大喜びした寮生たちは大先輩を「メシヤ」と讃える、という荒唐無稽な劇だった。
その劇を見たモス・はつみ先生が、
「あなたは、お酒を売っているより、高校生と遊んでいるほうが合っているわよ」と言った。それで、教師に転職することにした。
その時、高校生会に来ていた多くの敬和生が、自分の子供を敬和に送ってくれた。
とあるクリスマス。いつものように高校生と演劇の練習をしていたが、一人、大切な役の子が来ない。
どうしたんだと聞くと、タバコで謹慎になったんだという。
三日後がクリスマス、という時だった。
俺は、当時の寮長先生に電話をかけた。
「教会で、高校生を担当している、Tと申しますが、○○くんのことでお電話しました。」
「はい、何でしょう?」
「三日後のクリスマス演劇に大事な役で出演することになっているんですが、戻って来られるでしょうか?」
「ちょっと難しいと思いますねえ。」
「そこを何とかなりませんか?」
「そう言われましても…」
「大切な役なんですよ。」
「何の役ですか?」
「受胎告知の天使です。」
「天使がタバコで謹慎ですか。ホッホッホッホ」と寮長先生は愉快そうに受話器の向こう側で笑った。もちろん、俺の願いは聞き入れられなかった。
(T.H)