月刊敬和新聞

2016年7月号より「定期テストは本物の敬和生になっていく大きなチャンスです」

小西二巳夫(校長)

科学エンターティメント「すイエんサー」
 「すイエんサー」というNHK・Eテレの番組があります。かなりゆるめの科学エンターティメント番組です。人気コーナーにレギュラー出演しているのが「すイエんサーガールズ」と呼ばれる高校生たちです。彼女たちと対決するのが、東京大学、京都大学などの勉強がよくできると思われる大学の学生たちです。科学的テーマですから、大学進学などはあまり考えないすイエんサーガールズと、勉強には絶対的な自信を持つ大学生とでは、最初から勝負にならないと思われがちです。しかし、結果はそうではありません。たとえば東大生との最初の対決のテーマはペーパーブリッジでした。A4の紙15枚を使って橋を作り、そこにおもりを500gずつぶら下げていって、どこまで耐えられるかを競うものでした。ルールは、作るのに与えられた時間は5時間、外からの情報は一切シャットアウト、自分たちだけで考えて作る、というものでした。結果、東大生の記録は5㎏で、すイエんサーガールズは18.5㎏でした。

ガチンコ対決から見えるもの
 東大生がまず始めたのは公式や数式を黒板に書くことでした。そして数式や図を見ながら議論を始めます。論理的に橋の構造を考えて作ろうとしたのです。一方すイエんサーガールズは科学的知識がほとんどありません。そこでとにかく紙をあれこれ形にしていきます。手を動かして作っている最中に何かひらめいたら、そこで話し合います。それもいいんじゃない、それじゃやってみようと、相手のアイデアを否定せず、試していくのです。ガチンコ対決から見えてきたのは、本当の賢さや知力、生きる力は、机の前で頭の中で考えているだけでは身につかないことです。手や指や体を動かすことによって初めてわかることや見えてくるものがあるのです。大学生たちは紙で橋を作る間ずっと難しそうな顔をしていました。笑うことが悪いかのような態度と表情でした。それに対して、すイエんサーガールズは終始明るい表情で笑い声が絶えません。あせることなく、考えること学ぶことを一緒に楽しんでいるようでした。

2016学校紹介パンフレットの表紙
 今年の学校紹介パンフレットは表紙が敬和学園を斜め上から見た見取り図になっています。もともとのアイデアは、三月に卒業した山下智大君が作成した46回生の卒業アルバムの表紙です。デザインのすべてがコンピュータのドットを使って作られています。描かれているのが教職員と三月に卒業した46回生とすべて実在の人物です。目を凝らして見れば、それが誰かわかるのです。私も載せてもらっています。そして我が家にいつの頃からか居候をしているネコの織姫もいます。思わずほほがゆるみます。表紙をめくると見開きで載っているのが雰囲気のあるチャペルの外観です。学校紹介パンフレットを見た人は思うはずです。表紙と表紙の内側の写真との間には大きなギャップがあると。そのギャップが、一人ひとりの違いや個性を受けとめる幅でもあるのです。

定期テストは大切な行事、生きる力を養い本物の敬和生になるチャンス
 すイエんサーガールズの自由な発想と楽しそうな取り組み方に敬和生に通じるものを感じます。そうした学校だからこそ、学ぶ一人ひとりに取り組んでほしいことがあります。敬和学園は行事にも真剣に取り組む学校だといわれます。その理由は具体的に頭を使い、体を動かすことが、そして失敗がゆるされることで、本当の知識や知恵を身につけることができると考えているからです。そういう学び方を身につけることが、生きる力を育むと信じているからです。定期テストもその一つです。ふだんとは違う日程と時間割で行う定期テストは間違いなく行事です。一年に5回行う定期テストは敬和学園にとって大切な行事なのです。一人ひとりが主体的に取り組む行事ということができます。だからこそ学んだことを思い起こし、手と指を動かしてほしいのです。あれこれ理屈を言わないで五感を使い、手と指を動かして課題に取り組む、そのことを通して生き抜く力を身につけていけるのです。定期テストの主人公は間違いなく敬和学園に学ぶ一人ひとりです。その定期テストに真剣に取り組むことによって、本物の敬和生になっていくのです。